髭男・藤原聡以外のメンバーが作詞作曲した全6曲を徹底解説

音楽

Official髭男dism(通称・ヒゲダン)は、藤原聡(Vo/Pf)・小笹大輔(Gt)・楢﨑誠(Ba/Sax)・松浦匡希(Dr)の4人からなる島根県出身のピアノポップバンドである。「Pretender」「Subtitle」「ミックスナッツ」など数々のヒット曲を世に送り出し、日本を代表するバンドへと成長した彼らだが、その楽曲のほぼすべてはメインコンポーザーである藤原聡が手がけていることで知られている。

しかしながら、バンドの歴史を深く掘り下げると、藤原聡以外の3人のメンバーが作詞作曲を担当した楽曲が合計6曲存在することがわかる。メジャー1stアルバム『Traveler』(2019年)とメジャー2ndアルバム『Editorial』(2021年)において、それぞれのメンバーが自身の個性や経験を投影したオリジナル曲を発表しているのだ。

藤原聡の楽曲とは異なる視点や音楽的アプローチが詰め込まれたこれらの楽曲は、ヒゲダンファンのあいだでも高い評価を受けている隠れた名曲群である。本記事では、小笹大輔・楢﨑誠・松浦匡希の3人が手がけた全6曲について、各曲の特徴や誕生の背景とともに詳しく紹介していく。ヒゲダンをより深く知りたいファン、あるいはこれからヒゲダンを聴き始めようとしている方にも、ぜひ参考にしてもらいたい内容である。

小笹大輔

小笹大輔が作詞作曲した2曲

ギターを担当する小笹大輔は、ヒゲダンのメンバーの中でも独特の音楽的センスを持つ人物である。ヒップホップやR&Bへの深い造詣が彼の作曲スタイルに色濃く反映されており、藤原聡の楽曲とはまた異なるグルーヴ感と大人っぽいサウンドが特徴的だ。現在までに作詞作曲を担当した楽曲は2曲で、いずれもアルバムの収録曲として発表されている。

「Rowan」(アルバム『Traveler』収録・2019年)

◾️Rowan

Rowan」は、小笹大輔が初めて作詞作曲を手がけた楽曲であり、メジャー1stアルバム『Traveler』に収録されている。曲名の「Rowan」とはバラ科の木・セイヨウナナカマドの英名で、その花言葉には「私はあなたを見守る」という意味が込められている。自分の元を去ってしまった大切な人をいつまでも忘れられない切ない心情を歌ったバラードナンバーであり、花言葉の意味が歌詞の世界観と深くリンクしている。

サウンド面では、ヒップホップ系のドープなビート感が際立っており、ヒゲダンの既存楽曲にはなかった独特のグルーヴ感を打ち出している。編曲はヒップホップユニット・キエるマキュウのILLICIT TSUBOIが担当しており、J-POPのバンドサウンドとヒップホップのビート感が見事に融合した一曲に仕上がっている。小笹自身もリリース時のインタビューで「ヒップホップが好きな人にも楽しんでもらいたい」と語っており、制作に込めた思いが伝わってくる。

アルバム制作に際して、メンバーがそれぞれ作曲に挑戦しようという試みの中から生まれた楽曲でもある。繊細なギターの音色と歌詞のワードセンスが高く評価されており、コアなファンのあいだでは特に人気の高い一曲である。

「Bedroom Talk」(アルバム『Editorial』収録・2021年)

◾️Bedroom Talk

Bedroom Talk」は、小笹大輔が作詞作曲した2曲目の楽曲であり、メジャー2ndアルバム『Editorial』に収録されている。プロデューサー兼ドラマーとして知られるmabanuaとの共同アレンジで制作されており、ギターアレンジにはギタリストの有賀教平も参加している。

この楽曲は、疲れた心にそっと寄り添うような温かいサウンドが特徴的である。世界中に飛び交う悲しいニュースやネット上の否定的な言葉に傷ついたとき、そっと背中を押してくれるような優しさがあふれた一曲だ。「Rowan」がドープでシリアスなバラードだとすれば、「Bedroom Talk」はよりリラックスした柔らかな雰囲気を持っており、小笹の音楽的な幅の広さが感じられる。

mabanuaというプロデューサーを迎えることで、バンドサウンドに留まらない上質なアレンジが実現しており、ヒゲダンのアルバム曲の中でも特に洗練された作品のひとつといえる。

楢﨑誠

楢﨑誠が作詞作曲した3曲

ベースとサックスを担当する楢﨑誠は、ヒゲダンの中で最も多くの作詞作曲担当曲を持つメンバーである。現在までに3曲の作詞作曲を手がけており、ライブでの定番曲となっているものも含まれている。楢﨑は藤原とともに島根大学の軽音楽部に所属しており、バンド結成以前は警察音楽隊でサックスを演奏するという独自の経歴を持つ。その経験が楽曲制作にも独自の色彩を与えている。

「旅は道連れ」(アルバム『Traveler』収録・2019年)

◾️旅は道連れ

旅は道連れ」は、楢﨑誠が初めて作詞作曲を手がけた楽曲であり、SUZUKI「スイフト」のCMソングにも起用された。「旅は道連れ 世は情け」ということわざからインスピレーションを得たタイトルが示す通り、仲間と一緒に旅をする喜びや「人は一人では生きていけない」という普遍的なメッセージが込められた楽曲である。

楽曲の大きな特徴は、藤原聡以外のメンバーが積極的にボーカルを担当している点にある。1番のメインボーカルを楢﨑が、2番を小笹が担当し、松浦がコーラスとして参加するという、ヒゲダンの通常の楽曲とは異なる構成が取られている。バンド4人の絆と人とのつながりを大切にするテーマが、複数のメンバーによるボーカルという形で表現されているのだ。

明るくポップなメロディと前向きな歌詞は、休日のドライブや旅行の際にぴったりの一曲であり、ライブでも定番曲として演奏され続けている人気曲である。楢﨑は「ヒゲダンがどんどんすごいスピードで有名になっていく中に、あえて隙を見せたい気持ちから作った」と語っており、その素直な姿勢がこの楽曲の温かみにつながっている。

「みどりの雨避け」(アルバム『Editorial』収録・2021年)

◾️みどりの雨避け

みどりの雨避け」は、楢﨑誠が2枚目のメジャーアルバム『Editorial』に提供した楽曲である。「旅は道連れ」の明るくポップなキャラクターとは異なり、タイトルが醸し出す自然の情景を感じさせる繊細な曲調が印象的な一曲だ。

楢﨑がベースとサックスの両方を担うマルチな音楽性を持つプレイヤーであることが、この楽曲のアレンジにも反映されている。「旅は道連れ」で初めて作詞作曲を経験したことで自信をつけた楢﨑が、より深みのある世界観を表現しようとした意欲作といえる。アルバム全体の中でも静かな存在感を放つ楽曲であり、ヒゲダンの音楽的な懐の深さを示す作品となっている。

「Choral A」(『ミックスナッツ EP』収録・2022年)

◾️Choral A

Choral A」は、2022年公開の映画「異動辞令は音楽隊!」に関連したEP作品『ミックスナッツ EP』に収録された楽曲である。この映画はまさに警察音楽隊を題材にした作品であり、かつて実際に警察署の嘱託職員として警察音楽隊でサックスを演奏していた楢﨑誠にとって、深く個人的な意味を持つ楽曲となっている。

楢﨑はバンドのメジャーデビュー以前、島根県内で警察音楽隊に所属しながら週末には東京へ夜行バスで赴いてライブ活動を行うというハードな生活を送っていた。「Choral A」は、そうした自身の実体験と警察音楽隊への深い思い入れが込められた、楢﨑の3曲の中でも特に個人的な背景を持つ作品である。映画のカメオ出演まで果たした楢﨑にとって、この楽曲は音楽家としての原点に触れるような特別な一曲といえるだろう。

松浦匡希

松浦匡希が作詞作曲した1曲

ドラムを担当する松浦匡希(愛称・ちゃんまつ)は、バンド結成前から「音楽で身を立てる」という強い意志を持っていたというメンバーである。作詞作曲担当曲は現在のところ1曲であるが、その楽曲は藤原聡との共同作業によって生まれた意欲作となっている。ドラマーとしての独自のビート感覚が作曲に活かされており、軽快でリズミカルな仕上がりが特徴的だ。

「フィラメント」(アルバム『Editorial』収録・2021年)

◾️フィラメント

フィラメント」は、松浦匡希と藤原聡の共同作詞作曲による楽曲であり、ヒゲダンのメジャー2ndアルバム『Editorial』に収録されている。松浦にとって初めての作詞作曲担当曲であり、地元・島根県の名物イベントである出雲駅伝のテーマソングとしても起用されたことで広く知られている。

ドラマーである松浦が作曲に加わっているだけあって、楽曲全体を通じて軽快でグルーヴィーなビート感が際立っている。駅伝という前へ前へと進み続けるスポーツのテーマソングにふさわしく、疾走感と青春の爽やかさが同居した仕上がりになっている。

藤原聡との共同作業という形を取ることで、松浦が持つリズム的な発想と藤原のメロディセンス・歌詞力が融合した作品に仕上がっている。デモ段階から自分の好きな曲として挙げるほどに思い入れの強かった松浦が、ついに自らの手で世界観を作り上げた記念碑的な一曲といえる。

6曲まとめ一覧

以下に、藤原聡以外のメンバーが作詞作曲を手がけた全6曲をまとめる。

曲名担当メンバー収録アルバムリリース年
Rowan小笹大輔Traveler2019年
旅は道連れ楢﨑誠Traveler2019年
みどりの雨避け楢﨑誠Editorial2021年
Bedroom Talk小笹大輔Editorial2021年
フィラメント松浦匡希・藤原聡(共同)Editorial2021年
Choral A楢﨑誠ミックスナッツ EP2022年

まとめ:4人全員の才能がヒゲダンを形作る

Official髭男dismの楽曲の大多数は藤原聡が手がけているが、今回紹介した小笹大輔・楢﨑誠・松浦匡希の3人による楽曲群は、ヒゲダンというバンドの奥深さと多様性を語るうえで欠かせない存在である。

小笹大輔はヒップホップの影響を受けた独特のグルーヴ感で「Rowan」「Bedroom Talk」という2曲の大人っぽいサウンドを生み出した。楢﨑誠は「旅は道連れ」「みどりの雨避け」「Choral A」と最多の3曲を手がけ、人と人とのつながりや自身の経験を音楽に昇華してきた。そして松浦匡希は藤原聡との共同作業で「フィラメント」を生み出し、ドラマーならではのビート感を全面に押し出した楽曲を届けた。

これらの楽曲を聴くことで、藤原聡のシングルヒット曲だけでは見えてこないヒゲダンの別の顔に触れることができる。ヒゲダンをより深く楽しみたいなら、これらの「メンバー作」の楽曲を掘り下げてみることを強くおすすめする。それぞれのメンバーの個性と音楽的ルーツが刻み込まれたこれらの楽曲こそ、ヒゲダンがただのポップバンドではなく、4人それぞれの才能が支え合う本物のバンドであることを証明している。

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